2009/01/05
年頭訓示
仕事始めの1月5日、市役所前広場で職員およそ1、000人を前に、年頭訓示を行いました。以下、その内容をご紹介します。
<年頭訓示>
皆さん、新年明けましておめでとうございます。熱意あふれる元気いっぱいの皆さん方と、こうして新しい年を迎え、市民のために、京都の未来のために、頑張ろうと決意を固められることを、本当に嬉しく、心強く思います。昨年一年間は大変お世話になりました。ありがとうございます。また、年末年始にもかかわらず、仕事をしていただいた方がたくさんおられます。心から御礼申し上げます。私も大晦日31日まで、早朝から、地下鉄・市バスの営業所や水道の現場、中小企業支援センター、消防署、あるいは環境局のまち美化事務所などを訪ねました。お正月は二条城や美術館、動物園などを激励に訪問致しました。改めまして、「京都市民の、147万市民の生活を、市役所の職員が支えてくれているな」「観光都市京都のために尽くしてくれているな」と実感致しました。
年頭に当たりまして、私の決意も含めて、職員の皆さんお一人おひとりにお願いしたいと思います。昨年一年を表す文字は「変」でした。まさに激動の年でありました。素晴らしい変化もありましたし、京都市にとって厳しい変化もありました。素晴らしい変化。私は、就任以来、徹底して「現地・現場主義」で現場を訪ね、「職員の意識と行動が大きく変わってきているな」と心強く思っております。おむすびミーティング、ハートミーティング等々、本当に職員の皆さんの熱い心に触れ、胸が熱くなることもしばしばでした。気がつけば、一日も休まず、現場や市民活動の場、730箇所を超えて回らせていただきましたが、「本当に京都市は大きく変わったな」と実感しておりますし、市民の方々からそのような評価もいただいております。しかし、「温度差」があることも事実であります。まだまだ課題があります。共々に、更に徹底して変革していきたい、そのように思います。
同時に、厳しい変化。一つは、経済・雇用・生活の厳しさであります。昨年12月17日に「京都市緊急経済・雇用・生活対策本部」を立ち上げ、私自身が本部長になり、全庁挙げて取組を進めているところでありますので、個々の取組について、ここで改めて説明することは割愛させていただきます。スピードが大事であります。
二つ目は、本市の厳しい財政事情であります。これは変化というよりも、「引き続き厳しい」と言った方がいいかもしれません。向こう3年間だけで、964億円もの財源不足であります。さらに、国民健康保険や地下鉄等の特別会計の問題を重ねますと、まさに危機的な状況であります。皆さん、京都市は、この10年間、全国トップクラスの行財政改革を進めてきました。それを進めれば展望は開ける、そのように思っていました。しかし、国からの地方交付税の大幅な減額等によって、更に厳しい状況になっています。従前の発想の改革では、京都市は、早晩、財政再生団体に陥ります。京都は歴史と伝統のまちであります。自治のまちであります。そんな京都が、実質的に自治権を奪われ、国の管理下に置かれる、そんなことはどうしても避けなければなりません。この状況を脱しなければなりません。皆さん方には非常に申し訳ないことでありますが、来年度の予算も編成できない、そんな危機的な状況の下で、全職員の給与減額にも踏み切らざるを得ませんでした。苦渋の選択であります。しかし、皆さんの御協力・御理解に心から御礼申し上げます。何としても皆さんと一緒に、このピンチを乗り越えていきましょう。
私は、この大好きな京都のまちの隅々まで訪ねさせていただき、改めて京都のまちの持つすごさ、「地域力」、「文化力」、「歴史力」、何と言ってもそれらを兼ね備えている「人間力」に改めて感動しました。そして市役所の職員は優秀であります。その力を十分に発揮し、市民の皆さんと共に汗をかく、そのことによって必ず展望が開ける、そのように確信しております。共々に頑張りたいと思います。「京都未来まちづくりプラン」の案が出来上がりました。多くの市民の声を寄せていただきました。全庁的な議論を重ねました。間もなく定まりますこの「京都未来まちづくりプラン」をみんなで徹底して推進していく、そんな中で展望が開けると思っております。悲観主義者はチャンスに困難な課題を見つける。行動する楽観主義者は困難な時に好機を見つける。ピンチは、まさにチャンスであります。共々に頑張りましょう。そのために皆さんに三点お願いしたいことがあります。
まず、一つは、「未来志向への転換」であります。未来に責任を持った取組を主体的に、各職場で一人ひとりの主体性を重んじて、そして、組織としても一体性を大事にしていきましょう。ここ数年、京都市役所は不祥事に苦しみました。しかし、先ほど申しましたように大きく変わりました。私はこの経験を徹底して生かしたい。全庁挙げて「笑顔・親切・丁寧・テキパキ」、全庁“きょうかん”実践運動を更に推進しましょう。各職場で徹底して“きょうかん”ミーティングを行い、お互いに勇気を出して改革していきましょう。私は、今までの取組は「過去の清算」でしかなかった、厳しい言い方ですが、そのように思います。この経験を生かし、本当に職場の隅々まで市民感覚が行き届く風通しの良い職場、そして地域主権時代のモデルを作る素晴らしい職場にしていける、私はそのように考えております。同時にあらゆる取組、あらゆる施策を、過去の延長ではなく、未来の京都に責任を持つ、そんな視点で見直していただきたい、そのようにお願いします。
2点目は、「現地・現場主義の徹底ともったいない意識」であります。京都市は、基礎自治体として市民と一緒に仕事をしております。市民の一番近いところで仕事をしています。市民の願い、市民の悩み、苦しみを一番感じられる職場であります。これが京都市の強みであります。国の在り方、行政の在り方が、今問われておりますが、この基礎自治体としての強みを徹底的に大事にしていこう、私はそのことを改めてお願いしたいと思っています。現場を訪ねて、改めて思います。現場に様々な課題がある、問題がある、そして同時に現場に答えもある。職員の潜在的な能力を生かしきる。市民の方々の声、元気、それを行動に結びつけていく。そうすれば私は素晴らしい仕事が次々とできる。そうした実践例を、各区役所で、各事業所で、多く見ることができました。時間がありませんので具体的な説明をすることは避けますが、ぜひとも「現地・現場主義」でお願いしたいと思っています。そして「もったいない」。「もったいない」という日本語が環境意識の高まりと共に国際的な言葉になりました。しかし、私は「もったいない」という言葉はもっともっと深い意味があると思います。この歴史と伝統のまち京都の素晴らしい魅力を生かし切れなければ、もったいない。行動しましょう。また、市民の力、市民の方々の熱意が発揮できない、そんな行政であればもったいない。もっともっと市民の力が発揮できるような取組を、ひとつひとつ積み重ねましょう。さらには、私は職員の能力は優秀であると思っています。しかし、その能力が発揮し切れているか、各職場の力が発揮できているか。発揮できていないとしたらもったいない。どんどん発揮できるきっかけづくりをしましょう。仕組みを創りましょう。現場で考え、現場で行動する。現場で行動の芽を大事にしながら、それを育てる。そうした取組を各職場でお願いしたいと思います。
そして、3点目は、「仕事の進め方の転換」であります。各職場で抜本的な改革をお願いしたいと思っています。極めて厳しい財政事情の中で、市民の大切な税金を一円たりとも無駄にしないことは当然であります。さらに、限られた人員で、限られた時間で、限られた予算で、最大の効果を発揮する仕事を進めることが大事であります。例えば会議のあり方を抜本的に考えましょう。勤務時間中に行っている会議の時間、会議の労力というのはものすごいものがあると思います。しかし、どうでしょう。会議に使うエネルギーだけの効果を上げているでしょうか。「会して議せず」「議して決せず」「決して行わず」、こんなことになっていないでしょうか。また、膨大な資料を作り、そのために大切な大切なエネルギーを使っていないでしょうか。読みもしない、読まれもしないそんな資料作りに大切なエネルギーを費やしていないでしょうか。それらをひとつひとつ見直していこうではありませんか。副市長や幹部職員も気持ちは一緒であります。徹底して効率的な仕事をしましょう。必要な仕事を必要な時に徹底して行う、これが一番大事ではないかと思います。我々に対する過剰なサービス、過剰な対応は必要ございません。どうぞよろしくお願い致します。ただし、このことと、必要な時に機敏に市民のために行動する、英知を集める、本音で侃々諤々の議論をする、そのこととは峻別しなければなりません。手抜きは駄目です。「無駄なことをしない」ということと、「手抜きをしない」ことを峻別して効率的な仕事をする、そして、お一人おひとりが仕事に満足感を得て、余裕をもって自己の能力を開発できる、こんな職場にしていきたい、私はそのように思います。
そして、最大の無駄は二重行政であり、縦割り行政の無駄であります。それらについては、各職場で徹底して議論して、トップに上げてください。二重行政や縦割り行政を打破していくためには、私自身もその先頭に立ちたい、国にも京都府にも言うべきことをしっかりと言っていきたい、そのように思っております。人生は、良い時も失敗する時もあります。行政もそうであります。皆さんが、積極果敢な行動の上で失敗をされた時に、私はその責任は問いません。どうぞ失敗を恐れずに共に頑張りましょう。この一年、厳しい厳しい時代であります。厳しい時こそ、京都市の仕事が問われているのであり、職員一人ひとりの真価が発揮できる時であります。どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。